壊れる日常と一握りの希望

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「彼に触れたら五感はしっかりしていた。なのに目覚めないのはおかしい、何かきっかけが必要なんじゃないかと思ったんだ。だから、やった事は無いが奪う力を反転させたんだ。触覚をね」 「触覚?」 「簡単に言えば何かに触れたり誰かに触れられた時に感じる感覚の事さ。もう解除したけど、それを最大限に引き出しただけだよ」 山姫は習志野の襟から手を離し、彼の手を握り何度も何度も「ありがとう」を繰り返した。 「もう、目を覚まさないかと思った。このまま死んじゃうかと思った……。でも、助かるのね。徳善が助かる! ありがとう、本当にありがとう!」 笑みを浮かべる彼女の瞳から大粒の涙が流れぼろぼろと零れている。
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