終わりと別れ

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稲荷大明神様という人は普段は不真面目で、自分や他の狐達をからかったり、暇さえあれば遊び回り気楽に見えるが、大事が有れば率先して事態の収拾に努める。 自分を含め付き従う者達以上に自らを危険に晒して……。 「案ずるな遊び呆ける真似はせん」 「違います! ちゃんと帰って来るか、生きて帰って来るかと聞いているんです!」 息を荒くし、目に涙を溜めながら裁火は吠える様に言う。 「帰って来ぬ訳がなかろう。お主のいなり寿司は絶品だからのう」 笑い声を響かせながら、稲荷大明神様は木の葉につつまれ姿を消した。 「帰って来なかったらお預けですからね!」 稲荷大明神様の居た場所に向かって、そう言うと裁火は走り出す。 景壱の元へ……。
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