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がちゃりと扉が開く音がして小学生の私が部屋に飛び込んでくる。 「ただいまー。つくし。行ってきまーす」 背負っていた赤いランドセルを机の上に投げ出して再び部屋を出ていく。小さい私は私の存在は見えていないようだった。 「ああ。私ってああいう子だったなぁ」 感慨深くなる。小学生の頃の私は負けん気が強くていつも外で遊んでいるような子供だった。そのせいか友達も女の子よりも男の子のほうが多かった。 ふと、気が付くといつの間にか道路の真ん中に立っていた。足元にはつくしが眠そうにあくびをしながら座っていた。突然の場面転換も夢っぽいなと思う。 視線の先に数人の男の子が一人の女の子を取り囲んでいるのが見えた。女の子は困った顔をしていて今にも泣きそうだ。 そんな女の子の態度をみて小学生の男共はからかうように茶化している。 私の足元を小さい私が駆け抜けていく。 「こらー! 彩名をいじめるな!」 小さい私は男たちの中に飛び込んでいくとむちゃくちゃに手を振り回している。男の子たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ出していく。 「彩名大丈夫?」 泣きそうになっていた彩名が安心した表情を浮かべる。 「うん。ありがとう、京子ちゃん」 にっこりと笑う彩名と手をつないで歩き始める。 「かわいい子じゃないか」 つくしが相変わらず眠そうな顔で言う。彩名は顔の一つ一つは目立った部分は無いがそのバランスがとても整っている子だった。肩まで伸びている綺麗な髪はくせ毛の私は羨ましかったりしたのだ。 「つくしはも知っている子でしょ」 「ん? お前の友達にあんな子いたか?」 首をかしげるつくしを不思議に思ったが、ああ。と思い当った。小学校の頃、彩名とは友達だったけれどいつも外で会うか彩名の家で遊んでいたから家に来たことがないからつくしは見た事がないのだ。
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