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疲れた、もうイヤだ‥‥。
目を閉じるといつも、傷口の裂け目からそんな言葉が膿のようにあふれ出し、そして、由梨の生気を少しずつ削っていく。
視界を遮断した闇の中はいつも優しい静寂に包まれている。
この闇に同化してしまいたい。
ブラックホールに吸い込まれ、この身がバラバラに砕け散るならば、喜んで自分の身体を捧げるだろう。
そうは思っても、この静謐なシェルターを脅かすのは、いつだってあの音だ。
心臓の鼓動だ。
精神が立ち上がれないほど傷ついてはいても、心臓の鼓動は止まらない。
それが忌々しかった。
「由梨! 何故?!」
ごめんね、お母さん。
「救急車だ!」
ごめんね、お父さん。
相手がいつか変わると思うなんて、幻想だ。
誰かが助けてくれると思うなんて、おとぎ話の世界だ。
何かを得るには、何かを捨てなければならない。
正しいか、間違ってるのかなんて、わからない。
ただ、一つだけ理解したことがあった。
無情な弱肉強食のサバンナで生き抜くには、
自分が変わるしかない。
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