Sign of Love

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「うん。情報システムのグループ会社は持ってるんだけど、肝心の発注を出す側に詳しい人が当初はずっと不在で、ただその時最新のものをどんどん取り入れた結果、今の状態なんだ。一番酷かった顧客管理システムを夏に僕が新しくしたんだけど、そうしたら他も変えて欲しいって話になってさ」 「なるほど。それでどうせ新しくするなら、というわけですね」 「そうそう。もし一緒に仕事ができることになったらすごいよな。毎日絶対楽しくなる」 「ですね。新井さん、だったかな。週明け折り返してみます。何か進展があれば俺からもまきさんに伝えます」 「ありがとう。話が僕に下りてきたら、今度こそ推しておくよ」 「お願いします」  僕がときどき神長くんの会社でやっている開発事例を話していたから、新井さんに興味を持ってもらえたのかもしれない。何気ない会話からまさかこんな展開になるとは思ってもいなかった。  過去に『内部開発に注力していきたい』という話でブライトエデュケーションから転籍の話がきたのだが、現状厳しいのは僕自身もよく分かっている。残念な気持ちもあったが、これもまた貴重な機会だと思った。興味のある人と接して学ぶことは多い。 「それじゃそろそろ――」 「あのさ、神長くん」それはほとんど無意識で、呼び止めた僕の方がはっとした。 ……さっきからずっと、仕事とは無関係なある事が、頭の片隅を占有している。
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