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「はい?」
神長くんなら人の行動からその心理を解析できる。……僕が突然、女の子から手を繋いでくる行為がどういう心理の時か、なんて訊いたら呆れるだろうか。
「……どうしました?」
「いや、詰まってるところがあったから、見てもらおうかなって思ったけど、……やっぱりもう少し自分でやってみるよ」
「そうですか。……どんなカミングアウトがくるのかと、ちょっと期待してしまいましたが」
「え」
「というのは冗談ですが、俺が力になれることであれば協力しますよ」
完全に、間を読まれてしまっている。言っていることが完全に的外れじゃないのが恐ろしい。
通話を終えると、神長くんから情報提供に関してのお礼のメッセージが飛んできた。それに返信して僕はデスクに突っ伏した。
ポケットからスマートフォンを取り出して、佐倉さんからのメッセージをあらためて読み直す。僕のために一文一文時間をかけて書いてくれたことが伝わってくる。
「……返事が淡白だったかな」
さっきの優月くんの言葉を思い出して反省してみるものの、今更遅い。テキストエディタを立ち上げる。作りかけのプラグインを完成させてしまおうと思ったが、どうにも集中できないまま僕はすぐに席を立った。
結局のところ、こうやって考えてしまう時点で、僕は気が付いているのだ。窓を開けてベランダに下りる。吹き抜けた秋風が、鈴懸の枝をざわざわと揺らした。
Thank you for readeing.
See you next story☆
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