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面食らいつつも、皆は答えを考え始めた。
「ちくたくちくたくちくたく」
また焦らすように、スピーカーからわざとらしく時間の経過が報せられる。
「まだかなまだかなー?」
考え始めてからしばらく経ったが、誰からも答えは出ない。
「ねー、まだなの? 遅いなー。こんなのも分からないのー?」
問川はバカにするように煽る。
集中力を乱す目的があるのか、いちいち癇に障る言い方だった。
それを我慢して答えを考えるものの、閉鎖的な空間と相まって、皆のイライラがつのる。
「……っかるかよ。分かるかよこんなの!」
問川の煽りに耐えられず、吉田が叫んだ。
「何で目が覚めただけで、何月何日か分かるんだよ! 分かるわけないだろ!」
吉田の言うことはもっともだった。
問題文はとても短い。
そこから答えを導き出すのは、複雑な問題を解くのと同じぐらいの難しさがあった。
「じゃあ、吉田君の答えは『分からない』かな?」
「え?」
吉田がギクリとした顔をして固まった。
「ブブー、はっずれー! 残念でしたー!」
問川の声音は、まるで歌うかのように軽やかだった。
「いや、違う。まだ――」
吉田は最後まで言えずに姿を消した。
いや、姿を消したように見えただけだった。
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