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 スピーカーからの問川の声に、友名はいったん考えるのをやめた。 「ここから出られなくてもいいのぉ?」  誰も何も言わない。 「お家に帰れないよぉ?」  やはり誰も答えない。  死ぬかもしれないのに、答えるわけがなかった。 「……しょうがないな」  スピーカーからの声が止まり、教室内がシンと静まりかえる。  そこに、場違いな機械音が鳴り出した。  テレビの砂嵐音だ。  皆が黒板の隣にあるテレビに注目した。  砂嵐が止まり、五と零の数字が画面に映し出される。  画面の数字は赤く、血を連想させるその色に、友名は吉田の死に様をフラッシュバックさせた。  友名は頭を振って、必死にそれを追い出す。  吉田のことを考えると、友名は気が狂いそうだった。  考えちゃダメだ。  考えちゃダメだ。  考えちゃダメだ。  さっきはクイズの答えを考えることで頭の中をごまかしたが、今度はうまく逸らすことが出来ない。 「五分」  友名は問川の声にはっとし、スピーカーを見た。 「五分でこの教室を出られなければ、皆は僕と同じ火葬ってことで」 「火葬?」  再びざわざわと皆が騒ぎ始める。  火という嫌なワードが、皆の口を無意識に動かしていた。 「デッド・オア・コレクト。正解しなきゃ、死んじゃうよ?」  テレビの画面に映る数字が、残酷にもカウントダウンを開始した。  問川のケタケタと笑う声が、スピーカーから流れる。  絶望の二文字が、友名の脳裏をよぎった。  答えなければ殺される。  生き延びるには答えるしかない。  しかし、不正解でも殺される。  友名も含め、三十一人のクラスメイトたちは、理不尽な選択を迫られていた。  正解か死かの命をかけたクイズ。  この悪夢のような空間の中で、それは開始された。  残り。  三十人。  正解はまだ出ていない。
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