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ようやく中間テストも終わり、生徒たちは解放感に包まれ、来る文化祭に浮き足だっていた。
しかし、その気分をひっくり返すような事件が起きた。
十月十日、川に流され浮いている問川守が、発見された。
引き上げた時にはすでに息をしておらず、運ばれた病院で、死亡が確認された。
警察は問川守が川岸で足を滑らせ、川に落ちた事故だろうと判断した。
だが、問川守のクラスメイトたちは、この事件を自殺ではないかと密かに疑っている。
問川守はある三人のクラスメイトから執拗なイジメを受けていた。
毎日行われる言葉による暴力。
お前は生きている価値がない。
死んだ方が世の中の為だ。
何でまだ生きているんだ?
笑い声とともに、それらは毎日、続けられた。
問川守はそれに耐え切れなかったのではないか。
生きる気力がなくなってしまったのではないか。
その考えが、クラスメイトたちの頭の中に浮かんだ。
けれど、それを口に出すものは、誰一人としていなかった。
よけいなことをして、とばっちりを受けるのは嫌だったから。
イジメを見て見ぬふりした時と同じように、クラスメイトたちは口を噤んだ。
そのことに罪悪感を覚えながらも。
クラスメイトたちの心に暗い感情を残しつつ時間は流れ、全てが日常に戻ろうとしていた。
そして、クラスメイトたちもそれを望んでいた。
早く忘れてしまいたいと願っていた。
もちろん僕も。
でも、このことは一生消えずに残るだろう。
問川守の最後のあの姿が。
眼鏡の奥の必死にすがってくるようなあの目が。
僕の記憶を縛り続ける。
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