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短髪で勝気な田中が、皆に聞こえるように言う。
いつもは元気な田中の声も、どことなく不安に揺れているように聞こえた。
「……そうだな」
「ここにいる必要はない……もんね」
田中の言うことはもっともで、皆は田中に同意すると立ち上がり、心もとなさそうに教室のドアに向かった。
友名もそれに続く。が、先頭の誰かがドアを開けてくれず、友名たちはドアの前で団子状態になってしまった。
「何やってんだよ! 早く行けよ!」
友名の横にいた吉田が、焦れったくなったのかドアの方に向けて叫ぶ。
周りも不満に思っていたのか、同じように怒鳴り始めた。
しかし、それでも前に進まない。
やがて、前の方から信じられない言葉が伝えられた。
「ドアが開かない」
笑えない冗談だ。こんな時に何をふざけているのかと友名もイライラし始める。
友名より先に怒りを表していた吉田が、我慢出来なくなったのか、人を割って無理やり前の方に進んだ。
そして、しばらくして、教室のドアを思い切り叩く音が聞こえてきた。
「何で開かないんだよ!」
吉田の怒鳴り声だ。
ドアが開かないというのは、どうやら冗談ではなかったらしい。
得体の知れない状況に、ざわざわと不安が広がる。
現状を掴めない気持ち悪さから皆が口を噤み、誰一人として喋らなくなった。
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