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星崎に責任も過失もないという事らしかったが、業界内で彼女は当時、ある事ない事噂されてとても舞台興行を請け負えるような状況ではなかったのだと、大杉たちは噂程度に聞いていた。
今回は演出家・星崎あかねにとっての復帰第一弾という、大きな意味もあった。
それだけに、業界内外問わず注目度・期待値ともに高いというわけだ。
「もちろん。星崎さんに、『大杉を選んで良かった』って言ってもらえるように、俺ももっと頑張るよ」
「私だって、負けませんよ!」
大杉と泉は、稽古場の隅で約束を交わした。
二人とも星崎に認められるために、また、彼女の納得のいく舞台『アドルフ』を作り上げるために、必死だった。
「ボケっとすんな! アンサンブルだからって舐めてんのか、てめぇらは!」
稽古場では、相変わらず星崎の怒声がこだましていた。
大杉も泉も、まるで何か神々しいモノでも見るような目で、星崎を見つめていた。
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