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「松岡くーん、ケーキ買ってきたよー」
言いつつ重いドアをあけると、いつものようにカーテンが閉じてあった。薄暗い部屋の奥に、松岡くんが、いる。「あ、ケーキじゃなくてプリンだった」
松岡くんは返事をしない。いつものことだった。私は漏れかけたため息をそっと飲み込んで、ケーキ屋さんのオシャレな袋からプリンを取り出す。プリンは彼と私の大好物だ。付き合い始めたころは、プリンの美味しいお店を二人で探したり、自分たちで作ったりもした。脳裏をかすめた懐かしい記憶をなぞりながら、口角をあげて明るい声を出す。
「じゃーん、美味しそうでしょ。友達おススメのケーキ屋さんなのよ、ここ」
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