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「松岡くん」
風が吹く。
カーテンが揺れる。
床に落ちたひかりが、揺れる。
「なに?」という、少しだけ不機嫌そうな、優しい返事を期待している自分がいる。
「ま・つ・お・か、くんっ、」
ねぇ聞いてる? と言いかけて、やめる。聞いているのだ、たぶん。医師が言っていたのだからそうだろう。ただ、返事をしてくれないだけ。
風が、静かにやむ。
部屋を満たす呼吸音。
規則正しいノイズ。
「……ねぇ、もう、――」
彼の昏々と寝ている姿が、滲んで、揺れた。
Fin.
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