ラベンダー

5/5
前へ
/7ページ
次へ
「松岡くん」 風が吹く。 カーテンが揺れる。 床に落ちたひかりが、揺れる。 「なに?」という、少しだけ不機嫌そうな、優しい返事を期待している自分がいる。 「ま・つ・お・か、くんっ、」 ねぇ聞いてる? と言いかけて、やめる。聞いているのだ、たぶん。医師が言っていたのだからそうだろう。ただ、返事をしてくれないだけ。 風が、静かにやむ。 部屋を満たす呼吸音。 規則正しいノイズ。 「……ねぇ、もう、――」 彼の昏々と寝ている姿が、滲んで、揺れた。 Fin.
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加