2人が本棚に入れています
本棚に追加
こんな日に、彼といられるのであれば。
「明日だね」
ベッドの中から彼は外を見ながら呟いた。
身体には幾つものチューブが繋がっており、誰がどう見てもその先は明瞭だった。
でも私は、惚けた振りで今日も笑う。
「クリスマスだね」
医者から余命を宣告されたのは、三ヶ月前くらいだろうか。丁度、クリスマスの時期だと。
その時に決めた。ちゃんと悔いのないように三ヶ月を彼と過ごそうと。
「俺たちが付き合って、明日で二年目だ」
「それもそうだね」
私は彼の手を握った。
彼の手は温かくて、とてももうすぐこの世を離れる人のものとは思えない。だから余計に、不安になる。
「俺も、そろそろ……」
彼の横顔はとても無機質で、何を考えているのかは分からなかった。私は急に強い焦燥にかられて、笑いながらも舌を縺れさせ、彼の言葉から彼の未来を擁護した。
「キリストの生まれた日だよ。明日は幸福と、祝福の日」
そんな日に、わざわざそんな日を選んで、死んでいく必要なんてないよ。神様だって、そんなに惨くはない。
「キリストが生まれた神聖な日に死ねるって、それはそれで神秘的だよ」
彼は冗談めかしく笑う。
「全然神秘的でも何でもないよ」
私にとってみたら、残される身にもなれば。
私はぎゅっと唇を結んだ。
話せば話すほど、どんどん二人の空気は淀んでいった。まるで笑い話のように話しても、笑えない。
最初のコメントを投稿しよう!