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『もう一度言うけど、俺は君が思う以上に君のことを愛していたよ。もしも俺がこの懸けに負けても、自分を責めたりしないで。君には翼があるんだよ。俺は君がどこへ飛んでいったって構わない。寧ろそうであってほしいと思うんだ。翼の折れた俺と共に歩まなくても、翼を広げて、飛んでくれ。今までこんな俺の側にいてくれてありがとう。君を上手く愛せなくてごめん。でも世界で一番、愛していたよ』
彼の震える筆跡は、そこで終わっていた。
私はもう堪えることが出来なかった。その場に崩れ落ちて、この静かな部屋に不相応にも思えた嗚咽をやっともらした。彼の名前をまるで親を見失った子のように叫び続けた。
そうすれば彼はどこにも行かないと信じているかのように、私は彼の硬直した首の下に腕を回す。
どうして彼が死ななければならなかったのだろう。どうして他の誰かでは駄目だったのか。
どうして私は彼に執着したのだろう。彼でなければならなかったのだろうか。
こんなにも胸が苦しいのなら。
こんなにも身体が張り裂けそうなほど辛いのなら。
こんなにも、息ができなくなるほど涙が溢れるのなら。
どうして他の人では、いけなかったのか────。
彼のサイドテーブルに置かれた日捲りカレンダーは、“23”の文字を浮かべていた。
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