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通勤ラッシュの朝も過ぎ、人もまばらになった駅前通り。
そこにある猫カフェで男が話し合っていた。
「で、猫の話を創れだって? なんでまた。」
片方の眠そうな男が少し不機嫌そうに言った。
それに対してもう片方のチャラそうな男が答える。
「いやぁ、これには深い深いわけがあってだなぁ。この前、この店で凄い女の子にあってさぁ。
この子がほんとに可愛いんだよね。
おしゃれにコーヒーを飲む様子とか一人で読書する姿とか。特に俺が話しかけた時の笑顔。
あんな天使のように微笑む子がいたなんて!」
「それこの前も言ってなかったか。
涼子さんだか葉子さんだか。」
「彼女は女神のように微笑むんだ。
天使と女神じゃ種類が違う。
ほら女神ってどちらかと言うとツンとリンとしてない?けど彼女は天使のように可愛いのさ。
ミカエルとか…あんまり知らないけど。」
ミカエルは男なのでそっちの気ということか。
「まぁ涼子さんは引っ越しちゃったみたいだしもう会えないから仕方がない。
彼女の手の感触は忘れない。」
叩かれた感触のようだ。
彼女は膝に静かな猫を乗せてその猫を撫でながら読書をするのが趣味だったからうるさく話しかけるこの男は嫌いだったのだろう。
話が終わらなさそうな気配を感じた男は言う。
「で、僕に猫の話を作ってほしいってのとどう繋がるんだ?」
「そうそう、猫の話だよ。
その葵ちゃんの話す時の笑顔がほんとに可愛いんだけど暫くすると話ことがなくなっちゃってさ。
やっぱり寂しいじゃないか。
そこで閃いたのさ。
俺にはナツメという親友がいると。
ナツメに話を作ってもらえばいいと。
彼女、猫が好きみたいだから猫が活躍する話をお願い。」
その話を聞いてため息をついたナツメこと彼は物語を作るのが趣味である。
とは言え本を書くわけではない。
口頭で伝承のような物語をつくるのだ。
文字におこすことは決してしない。
その理由は彼が文字では伝わらない言葉の抑揚や調子を大切にしているからでもありただ単にめんどくさいからでもある。
しかし彼の話す物語は商業小説にも勝るとも劣らないすばらしいものであり、彼の話を聞くためにこの店を訪れるものもいるくらいだ。
しかし彼は今安眠を妨害されたせいか不機嫌であり乗り気でなかった。
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