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第二話 ~始動~
-999年9月10日・雨-
―クラウザー少佐。
奴は彼を確かそう呼んでいた。
彼は、恐らくまだ成人に達していない少年だろう。
なのに王国軍に属し、そこまでの地位に昇りつめたのか…。
大したものだ。
それとも、子どもに頼らなければならぬほど、国は危機迫っている状態なのだろうか。
……………。
どちらにしろ、『ここ』にいる限り俺の命は常に危うい。
俺はゆっくりと立ち上がり、頑丈に組まれた鉄格子を力づくでこじ開けた。
「おい貴様!何をしている!」
そばにいた看守が俺のもとへ歩いてきた。
やはり面倒なことになりそうだ。
「ここに長居は無用と感じたのでな。そろそろ出ようと思う」
「何を…ぐふっ」
看守のみぞおちに一発拳を入れてやると、すぐに気を失った。
随分と軟弱なものだ。
異変に気付き襲いかかってくる看守達を、俺は次々と殴り蹴り、投げ倒していく。
「お、おい!ギルバート!?」
「何をしているんだ!屋敷の者に警備兵を呼ばれて…お前、殺されるぞ!」
「…お前らのも、開けてやる」
看守を全て倒した後、独房の鉄格子を全てこじ開け、囚人達を全員出してやる。
ここにいる者は皆、でっちあげの罪状により無理矢理投獄された、無実の男達だ。
いつまでも、こんな暗い監獄にいる必要はない。
「お前…何かするつもりなのか?ギルバート」
「まずはこの屋敷の主、あの肥え太った醜い豚に復讐。そして―」
この国のやり方に疑問と不満を持っていたところだ。
自分達に惨めな思いをさせた貴族共に復讐をし、その後は…。
「革命を起こしてやる」
革命…。
俺たちが?
どうやって?
皆、口々に不安と戸惑いの声を漏らす。
声が止み、しばらく沈黙が続いた後、一人の男が口を開いた。
「俺は…俺はやるぜ…俺も貴族は嫌いだ、偉そうに踏ん反り返っている野郎共は、皆根絶やしだ!俺はギルバートに付いていくぜ!」
「あぁ。国も国だ!あんなクズ共を野放しにするなんて許せねぇ!俺も行くぞ!」
「よぉし!てめぇら、ギルの後に続け!」
男達の雄叫びが、監獄に響いた。
革命…そして、王国軍と俺の率いる革命を志す者達―反乱軍の戦いは、もうじきに始まる。
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