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-999年9月12日・晴れ-
「脱獄?」
執務室。
クルシャ家―俺が三日前、視察に行った貴族の屋敷の監獄に収監されていた囚人達が、脱獄をしたという報告が入った。
「はい。主犯はギルバート・バリッシュ、年齢は25。信じ難いことに、独房の鉄格子を一人で全てこじ開け、囚人を一人残らず脱走させた…とのことです」
「…クルシャ侯爵は?」
「クルシャ家一族、及び看守らは一人残らず殺害された模様です」
ギルバート・バリッシュ―。
何かしでかすのではと思ってはいたが…。
「ッ…屋敷の警備隊は何をしていた!」
「は、はい!生き残った警備兵が言うに、あまりに大勢で突然かかってこられたので何も太刀打ち出来なかったとのことです」
―あの後部下から聞いた話だったが、あの監獄に収監されていた者達は、全員無実の罪で投獄されていた普通の民間人だったということだ。
そのような者達が………。
(…もう、立派な犯罪者ではないか…彼らは…)
「現在、その脱獄犯らは何を」
「まだ詳細な情報は入ってきていないのですが、同じく貴族や国に対し不満を持った者達を巻きこみ屋敷を荒らして回っているらしく、人数は200を超えていると…」
「馬鹿な…クルシャのような阿呆もいるが、殆どが善良な民だというのに!」
「彼らはバリッシュをリーダーに掲げ、現在も革命と称し…」
「何が革命だ!これはただの暴動ではないか!」
「如何なさいますか、クラウザー少佐」
これは大問題だ。
今すぐにでも止めないと大惨事になる。
何千…何万もの関係のない命が犠牲になるかもしれない。
軍をあげて、力ずくで止めるしか…。
「…私だけでは判断しかねるが、場合によっては軍を出すことになるかもしれない。お前も覚悟しておけ。…下がっていいぞ」
「はっ!失礼致します」
諜報部員が執務室から出て行き、俺一人が残された。
―俺の予感は的中してしまった、嫌な方向に事態は動き始めている。
いや、既に始まってしまったのか…。
貴族や王国に不満を持った国民による、暴動…反乱…。
「くそっ…」
執務室に、机を殴る音だけが虚しく響いた。
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