第二話 ~始動~

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いつの間にか男は俺の後ろに回り込み、首元にトランプが何枚も突き付けられた。 トランプその物が刃物になっているのだろうか。 喉元に軽い痛みを感じた。傷が付いたようだ。 そして男は、俺の耳元で囁きだした。 「僕に危害を加えようとしない方がいいよ。僕だって暴力は嫌いだよ~?けど、自分の身を守るためには…」 マスクの隙間から覗く眼が冷たく鋭く光り、男の声がワントーン低くなった。 「相手を八つ裂きにするしかないからね」 「く…」 大佐が男に俺から離れるよう指示を出すと、「はぁい」と元のトーンで答え、離れた。 ―まだ動悸がやまない。 この男のプレッシャーは、それほどのものだったのか。 それとも、未だに俺が……。 「彼の名はウィリアム・K・ミラー。私が呼んだ、手品の出来る殺人鬼だ」 「ハァ、ハァ……て、手品…?」 「大佐ぁ~…逆ですよぉ、逆!僕はごく普通の手品師です。殺しは副業!おまけです!」 普段は自慢の手品で、むしろ人々を喜ばせているんですよ? そう言ってウィリアムは一人で可笑しそうに笑った。 こんな素性の知れない者を頼り、隊を出さなければならないのか、我々は―。 首元に触れると案の定、白いグローブに鈍い赤色の滲みが出来た。
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