0人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
第三話 ~最悪の朝・1~
-999年9月16日・曇りのち雨-
『……!…だ……!やめ…』
「うあぁぁーーーッ!!!」
何だったんだ、今のは…。
………夢、か。
…夢?
いや…あれは、俺がどこか遠くへ葬り去ってしまいたい過去の出来事だ。
何故、あんなに昔のことを思い出してしまったのだろう。
…理由なんて、本当は分かっていた。
三日前、あの手品師―ウィリアムが、俺の喉元へ刃物を当て耳元で囁いてきた。
それだけで、あの忌まわしい過去を思い出すのは十分過ぎたのだ。
「少佐ぁ~?どうしたの~?」
!
ウィリアムが、俺の自室の前から声をかけてきた。
タイミングとしては最悪だ。
「…何でもない。部屋から離れろ、どこかへ行ってくれ」
「入るよ~?少佐ぁ~」
「!!」
そう言って、やつは俺の許可も無しに自室へ入り込んできた。
朝だからか、初めて会った時に着ていた衣装もマスクも身に着けておらず、随分ラフな格好をしている。
整った顔立ちをしているな。
ふと脳裏にそんな感想が過ぎった。
何考えているんだ俺は。
ギシッ…
「?!」
「朝から大絶叫~!な少佐殿は、どんな夢を見たのかなぁ?いい夢…ではなかったんだよね?」
寝台に腰を掛け、俺の顔を覗き込むように身を乗り出してきたウィリアム。
嫌な汗が、背中を伝った。
最初のコメントを投稿しよう!