第三話 ~最悪の朝・1~

1/2

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ

第三話 ~最悪の朝・1~

-999年9月16日・曇りのち雨- 『……!…だ……!やめ…』 「うあぁぁーーーッ!!!」 何だったんだ、今のは…。 ………夢、か。 …夢? いや…あれは、俺がどこか遠くへ葬り去ってしまいたい過去の出来事だ。 何故、あんなに昔のことを思い出してしまったのだろう。 …理由なんて、本当は分かっていた。 三日前、あの手品師―ウィリアムが、俺の喉元へ刃物を当て耳元で囁いてきた。 それだけで、あの忌まわしい過去を思い出すのは十分過ぎたのだ。 「少佐ぁ~?どうしたの~?」 ! ウィリアムが、俺の自室の前から声をかけてきた。 タイミングとしては最悪だ。 「…何でもない。部屋から離れろ、どこかへ行ってくれ」 「入るよ~?少佐ぁ~」 「!!」 そう言って、やつは俺の許可も無しに自室へ入り込んできた。 朝だからか、初めて会った時に着ていた衣装もマスクも身に着けておらず、随分ラフな格好をしている。 整った顔立ちをしているな。 ふと脳裏にそんな感想が過ぎった。 何考えているんだ俺は。 ギシッ… 「?!」 「朝から大絶叫~!な少佐殿は、どんな夢を見たのかなぁ?いい夢…ではなかったんだよね?」 寝台に腰を掛け、俺の顔を覗き込むように身を乗り出してきたウィリアム。 嫌な汗が、背中を伝った。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加