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 その日のローザは、人間の年齢で十四歳だった。男でも、女でもない。「人形族」と呼ばれる不老不死の一族に生まれ、人間の民を治める王室の第二子だった。民は王家の者たちを、城の名と同じ、「アイスド・ローゼ」と呼ぶ。  人形族は、白い肌と細い身体を持ち、美しいことで知られていたが、ローザヴェル・シェリステラの美貌は、その中でも際だっていた。性を持たない証拠に滑らかで無垢な身体、きゅっとつって光と意志を宿したアクアブルーの瞳。ライトゴールドの髪は、身体の線を包むように波打っている。その幾束かを細く編み込んで、小さなティアラをそっと載せたのは、この子で遊ぶのが好きなフェザーキルだ。ローザの生みの親の片方でもある。  十四歳のある日、好奇心から一人で城を抜け、町へ遊びに行ったローザは、恐ろしいものを目にしてしまった。 「あぁ、痛い! 死ぬわ、私死ぬわ!」  のたうちまわりながらわめいている、人間の若い女。 (何なの、怖い……)  その貧しい家で起こる出来事を、偶然通りがかって物陰から覗いたローザは、すぐに理解できなかった。女が子どもを生んだのだ、ということは。
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