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 だから、血の固まりのような新しい命が産み落とされたときは、恐怖とショックのあまり、失神していた。 「ローザ、ローザ!」  城のベッドに運ばれ、ナジカに揺さぶられて、ローザはやっと目を覚ました。ナジカリット・セディアースは、ローザより二十年先に生まれた、王室の第一子だ。人間の年でいうと二十歳くらいの青年に見える。性別はないが、どちらかというと男に近い。外見の成長はすでに止まっていて、この先もおそらく、ずっとこのままだ。濃紺の髪をアシンメトリーにして、均整のとれた長身を軍服風の衣装で包んでいる。  黒い瞳に気遣われて、ローザは浅くうなずき、微笑んでみせた。  まだ動揺していて、うまく声が出ない。目にした光景を思い出すと肩がふるえ、吐き気がした。 「ナジカ、私、怖かったんだ……」  声を揺らして泣きじゃくりながら、拙い言葉で訴える。  人間があんなふうにして命をつなぐのだと、ローザは知らなかったのだ。 「薔薇から命をもらうんじゃないって分かったのが、ショックだったのか?」  人形族と人間が根本的に違うのを、ナジカはとっくに分かっている。見てはいけない本で学習したからだ。  
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