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王家の第二世代として生を受けたものの、十四歳で成長が止まったローザには、実質、法律上の王位継承権はない。マリヤたちが生きている間は回ってくることもないだろうが、人形族は、完璧な不老不死ではないのだ。自然死や病死はしないものの、殺されることはありえる。人間と違って、そう簡単に死にはしないが、身体をバラバラにされたりすればさすがに息絶える。子孫を残すのは、その万一のときのための保険なのだ。
人形族は二十歳前後で外見年齢の進行が止まるのがふつうだが、ローザの場合は早すぎて、困ったことになっている。中身はとっくに大人なのに、成人した国民がやるあれこれの許可が下りないのだ。
ヴァステス帝国では十八歳以上が成人となっているため、酒も煙草もたしなめない。選挙権はじめ参政権もないので、王家の者であるにもかかわらず政治に意見を反映させられない。また、結婚とそれにまつわるすべてのことができない。外出制限もあるし、酒場や風俗店には入れない。
要するに、心が大人ならきわめて不自由に感じる生活だ。
「法律、変えりゃあいいじゃん」
あるときナジカが意見したが、聞き入れられなかった。
この件に関して、内閣で二十年近く議論された結果、「同年代の国民に与える影響がきわめて大きいため」特例を設けることは不可となったのだ。
「酒飲んだりしてるガキなんかを怒ったときとかに、『だってローザ様もやってるじゃん』ってなるからだとよ。頭かてーよな」
ナジカは、ローザの部屋のベッドでくつろぎながら欠伸混じりに言った。
「私はもう、子どもじゃないのに」
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