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カーテンから差し込む陽射しは強い。
ーーもうこんな時間か。
時計は9時を指していた。
傍らにはまだ深い眠りについている澪がいる。今日は遅番だと聞いているし、まだ起こさない方がいいだろう。
ーー最後は半分くらい意識飛んでたしな……
夏休みはライブが続いていて、3日振りのセックスだった。期間が空いた後のセックスはいつもやり過ぎてしまう。それなりに反省はするのだが、澪の反応が欲望を駆り立てるのだ。
澪を見つめながら、先日のメンバーとのやりとりを思い出していた。
***
「はい!どうぞ。」
ノックの音に龍二が応える。
ドアを開けてスタジオに顔を覗かせたのは澪だった。
「お邪魔してごめんね。お腹空いたかなって思って……おにぎりとお茶持ってきたんだけど、どうかな?」
時計を見ると14時になろうとしていた。昼食を取っていなかった若者たちは顔を綻ばせる。
ギターを肩から下ろした朔が顔を上げると、もうすでに拓海が澪に近寄ってトレイを受け取っていた。
「ありがとうございます。」
「由美子さんと作ったの。トレイはまた下げに来るから置いておいてね。」
ーーおい待て。
ニコニコと拓海にトレイを渡す澪の手のひらに、拓海がさりげなく触れている。
元々仏頂面が板についているためか、澪は全く気にしていない。
朔の方を見てニコッと笑い、澪はスタジオからすぐに出て行った。
テーブルに置かれたおにぎりは、すぐに無くなってしまった。
空腹が満たされ、自然とプライベートの話になる。
「年上っていいよなぁ……安心感あって。」
翔真がため息まじりに呟いた。
「なに?どしたの。」
拓海が斜め向かいの翔真に尋ねる。
「今朝、彼女と別れた。」
皆が黙り込み、空気が重たくなる。
「デビューしてから外でデートしづらくなって。俺なりに気を遣って人混みは避けて会ったりしてたんだけどさ。ホテルも写真撮られたらやだって言われちゃって。この先ずっとこんな状態が続くのは耐えられないって言われた。龍二は大丈夫なの?」
龍二は苦笑いして答える。
「俺らはあんまり変わらないかな。元々、休みの度に出かけるわけじゃなくて、家で話すだけのことも多いし。ホテルも滅多に行かない。」
翔真が机に突っ伏してため息をつく。
「俺も同棲してれば良かったかな……。」
ーーさりげなく俺に話題を振るな、翔真。
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