prologue

6/6
6961人が本棚に入れています
本棚に追加
/856ページ
 けれど家族に遺産はほとんど残らず、こうやって俺と母親が働いて金をやり繰りしていた。 「ねぇ、お兄ちゃんはここを出る気ない? 生活を分ければお兄ちゃんの負担が軽くなるし、うちは国から援助が出るから」  母からのまさかの願ってもない切り出しに、俺は飛び付いた! 「よ、夜のバイト決まったから、出たいって言おうと思ってたんだ! マジでいいの!?」  よっぽど嬉しそうな顔をしてたんだろう。苦笑いで、家を探さないとねと言われた。  こうして俺は、一人暮らしを始められるようになり、これから自立して行くのだと心に決めたのだ。  結局出来のいい弟が俺のことを考え、そして自分の進学のために色々と勉強したらしく、福祉についてはお金を収める人がいるなら、助成はされても少ないので、それを丸まんま俺の分だけ外せば互いに締め付け合わずに生活出来る事も調べて来てくれた。  俺の金は殆どが、弟に行くけど俺が父や母からしてもらったことを返しているようなもんだ。大学だって安くないのは解ってるのに、父は行けと言ってくれたんだ。  だからお返しなんて、とんでもなく途方もないけど、少しでもいいから助けになれば、喜んで貰えればいいと思う。  安定した正社員の仕事が見つかれば夜だって辞めてもいい。  取り敢えず今は、前を見て進もうと思う。
/856ページ

最初のコメントを投稿しよう!