pleasure

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 まだ新しい家には移り住んではいないけど、バイトは今日からなので夕方に仕事を終えると少し早目に職場に到着した。  二宮先輩とは簡易メッセージのID交換をしていたので、メッセージが来た時は驚いた。 にの>小鳥遊君、こんにちは。 バイトの始まりより30分早く来てね。 ちゃんとその分はバイト代金出すから。 小鳥遊>わかりました、今日から宜しくお願いします。 にの>うん、じゃ後で 小鳥遊>はい  何だかこんな簡単でいいのか不安になるが、そこはあまり気に止めなくていいだろう。それに同僚に、夜の店だからそこまで気にしなくて良いとも言われたし。  ただ同僚が夜の仕事場を教えろと煩かったので俺は自分ではなく友達の話だと逃げ切る事も覚えた。  まぁそんな事はどうでもいい。  初出勤で予定より早く入るから、15分は早目に到着していなければと思って45分前には店に着いた。  CLOSEの札が掛かった店の扉を押せばちゃんと開いて、中を覗く様に扉から顔だけをひょっこり出せば、カウンターで二宮先輩がマドラー回して何かを作ってるようだった。  扉が開いて俺が覗いてるのが解ったのだろう、視線をこっちへと向けてニッコリと笑って手招きされたので、俺も頭を下げながら中へと足を進めた。  昨日は暗くて良く分からなかったけど、店内は案外明るくて、酒を扱う店の独特の香りを感じた。 「こんばんは・・・」 「うん、おはよ。ここではおはようが挨拶ね」 「あ、はい!おはようございます」  促されるままカウンターに腰掛けると 色々と説明が始まった。 「仕事は、酒を出すこととお客さんの相手かな。後は料理出来るならチャーム作ってもらう事もあるけど・・・どう?」 「あ、はい料理はそこそこに出来ます」  親が忙しくて弟達の飯は作ってたから多少の料理は出来る。 「後はお客さんと話したりするのが主だね、それと・・・掃除かな?今いる従業員俺ともう1人の2人だから、後で紹介するけど俺はマスターか〝にの〟で呼んで。」 「は、はい・・・マスター」 「ん、俺がここのオーナーだから、学校には勿論内緒で頼むね?」  そう言われて、俺は大学を中退したとハッキリと言ってないことに気が付いた。まだ学校 の事を言ってないのと誤魔化した履歴書に付いては話さなければと思った。 「あの大学は俺もう在籍してないんで・・・2ヶ月前に退学してます。だから、履歴書に学校書くと計算合わないとか思って、書けませんでした・・・」
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