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「普通のデートっぽいね。出来たらいいね」
「出来るよ、時間作る」
「ありがとう」
「アリサの事、大事にするよ? 俺、贅沢だと思ってるし」
リュウはよく言う。
妻子持ちの自分を、好きになってくれるなんて、そんな恵まれたことは無いと。
そんなのは結局、妻子持ちの俺にとって都合よくそばに居てくれる女がいるなんてラッキーと言ってるのと、何ら変わりはない事くらい、馬鹿な私でも分かる。
だけど別にそれでいい。
だって結婚してなくたって、裏切る奴は裏切るじゃないか。
私しか守るものが無くたって、私を大事にしようとしない奴なんて山ほど居るじゃないか。
タクミもリュウも、私を大事にしてくれる。
好きだと言ってくれる。
私も彼らを手に入れようとしないから、何かを期待する必要もない。
例えば道端で手を繋げなくても、近場で堂々と食事が出来なくても、何かあった時に二の次にされても、はなっからそんなのは分かっていた事だから傷付きもしない。
だけど私はたまに思う。
いつから私はこんな風になってしまったの?
いつから私は恋愛を遠ざけるようになってしまったの?
私が本当に望んでるものは? 私が本当に欲しいものは?
私が寝るために使うベッド。
私はいつもここに一人。暗闇の中でいつも一人。
帰る場所がある彼らには、彼らの欲求を満たすための場所でしかないベッド。
私が寝る時、もしも隣に誰かが居たらと想像してみた事がある。
いや、かつてそんな事を経験したことがある。
二人で寝ると、寝具というのは思っているよりも暖かくなる。
夏は離れたくなる位暑いけれど、冬は欠かせない位ポカポカと気持ちよくなる。
別に現状に不満なんて無いのに、夜になると余計なことを考えるから嫌だ。
自分の進んでいる道にいくつかの疑問点が浮かび上がってくるから嫌だ。
その疑問点は、解消しなければならないものだと、分かっているから嫌だ。
私は最悪な人間なんだと思い知らされるから嫌だ。
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