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 一筋の汗が麻衣の額に流れる。 「昔、麻衣から似たようなことを聞かされたのを思い出した。覚えているかな? 友達の恋人を奪って、すごくドキドキしたって話」  美里の口調は今までと変わらず、優しいものだった。それなのに、麻衣はすごく嫌な感じがした。 「ごめん、忘れちゃった」 「そう、じゃあ今のことは忘れて」  美里は目を細めて、言った。そして、美里は時計をちらりと見てから、カウンセリンが終わりだと告げた。  麻衣は美里の機嫌を損ねたから終わったのかと思ったが、どうやら違うようだった。自動的に一時間という時間を経過したら、終わるつもりだったらしい。そのらしいというのは、たまたま彼女の書いていたメモがちらりと見えて、一時間で終了と書かれてあったからだ。    帰り際に、麻衣はまたカウンセリングをお願いしても良いかと美里に訊いた。すると、美里は、今日何度も見せた笑顔で構わないわと言って、仕事用の電話番号を教えてくれた。  こうやって、二者関係は解放された。
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