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◆◆◆  美里は仕事終え、一息つく。本当はうまくことが進んでいるのか、確認の意味を込めて、彼女との二者関係を築いた。それが、まさか、信じられない事実を知ってしまうことに繋がるとは思わなかった。    美里は右手を握り締める。    いい度胸ではないか。そうやって、何かに縋ろうとしていることには確かに驚いたし、その相手も自分の知っている人物で、さらに驚いた。だが、それさえもこちらが奪ってしまえば、また彼女を苦しませることができる。    それに、彼女は昔あったことを覚えていなかった。あれほど、人の気持ちを踏みにじっておいて、自分は助けて欲しいなんて馬鹿馬鹿しい。嫌でも思い出させてやるよと、美里は心の中でつぶやく。    今回は彼女に心地の良さを味わってもらった。間違えなく、今度何かあったら連絡してくるに違いない。美里は彼女の話に同調しながら、合間に核心を突くようなことを混ぜていた。    偽りの二者関係は成功と言ってもいいだろう。    悪かったな根深い嫉妬女で、美里は一人、自宅の玄関前で不気味に微笑む。    さて、もう一仕事やらないといけない。    玄関のドアを開け、いつもと同じ笑顔でただいまと夫に声をかける。そして、右手に握られたナイフをそのまま夫の方へと突き出した。 「相手が悪かったわね。まさか、あなたが麻衣の不倫相手だったなんて」  動かなくなった夫に美里は毒を吐く。  これで、また彼女は一人ぼっちだ。そう思うと心の奥底から抑えていた高揚感が溢れ出し、笑わずにはいられなかった。  愛した人間に裏切られ、また愛した人間を失い、そして、信頼したカウンセラーにまで裏切られる。ああ、残念な女ね。本当に。 「これはあなたの罰よ」  誰もいない部屋で美里はつぶやく。  これでやっと、彼女への復讐は完成する。おそらく、縋るところがなくなった彼女はまたこういって姿を現すだろう。 「疲れた……もう嫌だ」と、ね。 <了>
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