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あれほどあっさりカウンセリングを受けてもらえるとは思わなかった。麻衣はカウンセリング当日になっても、実感が湧かなかった。美里は知り合いのカウンセリンが嫌いと言っていたのにどうしたのだろうか。
麻衣はスマホに視線を落とす。昨日、美里から送られてきたメールに今日の待ち合わせ場所の住所が書かれていた。
その住所と現在地を照らし合わせながら、道を進む。大きな交差点を右に曲がり、またすぐに細い道を右に曲がる。そうして、しばらく道なりに歩いていると、児童養護施設という看板が見えてきた。
どうやら、ここが待ち合わせ場所のようだ。二階建ての学校のような建物が見える。美里は恐る恐る、敷地内へと入る。
「こんにちは!」
威勢の良い声が敷地内に響き渡った。外で遊んでいた子どもたちが麻衣の姿を見つけて、挨拶をしたようだ。
麻衣は小さな声で挨拶を返す。
子どもたちの横を通り過ぎ、麻衣は胸を撫で下ろす。
本当にここであっているのだろうか。カウンセリングすることを考えると、もっと静かで穏やかな場所の方が良いのではないだろうか。麻衣は心の中で悪態をつく。
児童養護施設受付はこちらと書かれたところから中に入る。
「こんにちは! もしかして、美里先生に用がある方でしょうか?」
受付の小さな窓口から、女性がこちらを見て微笑んでいた。
「そうです……」
麻衣はあまり目を合わせないように答える。自分と対照的な人間をみると、それだけで劣等感を感じる。
「でしたら、先生はここの廊下の突き当たりにあるカウンセリングルームにいると思いますので」
「……ありがとうございます」
麻衣は一礼し、スリッパに履き替え、施設内に入る。
女性に言われたとおりに進むと、真っ白なドアにカウンセリングルームオープンというカードが掛かっていた。
ドアをノックすると「はい、どうぞ」と親しみのある声が聞こえてきた。その声につられるようにドアを開ける。
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