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国王と臣下の間柄(4)
「陛下も物足りないのでは――って、そういう意味だったんですね……」
全てが片付いた夜、王の私室にて。長椅子に腰掛け、ティーカップを両手で包み込みながら、フラットが溜息と共に呟く。
俺も実際ファレにその言葉を言われた時は、何故弟であるフラットに欲情せねばならんのだと疑問に思ったものだ。フラットの性別を知らなかったのであれば頷ける。
「ヴェラは娘に、フラットが男だと教えていなかったのか」
「我々を小さい頃から世話していましたから、逆に盲点だったのかもしれませんね。当然の事実すぎて」
情けなさそうに笑うフラット。意外にもショックを受けているようなので、お前が女みたいな容姿をしているからだ、とは言わないでおいてやる。
「しかし、ヴェラ……いつからあんな計画を企んでいたんだ」
「いつからも何も、最初からだろ」
俺の独り言のような問いに、窓辺に立ってコーヒーを飲んでいたシャープが答えた。
「気づいてたのか?」
「いや、むしろアンタが気づいてなかったことの方が問題だよ。あのオバサンがこの城に居座ってる理由考えたら分かンだろ」
呆れた様子で、シャープは続ける。
「ロクなコトしねェだろうと思ってたから、前々からオバサンの動きには警戒してたのさ」
「今回お見合いの話を持ちかけてきて、ついに動いたか、と思ったものです」
双子は得心尽くといった様子で同時に頷いた。
ヴェラが紅茶に仕込んでいたのは強力な媚薬だったそうだ。ファレの針で俺を弱らせ、紅茶で一気にオトす二段構え。妃に迎えると言質を取れれば万々歳。
俺は何も知らなかった。遠縁なのにいつまでも面倒を見てくれて、世話好きな人なんだなぁくらいにしか考えていなかった。鈍すぎるだろう、と自分自身に嫌気が差してくる。
「尋問で動機を吐いたぜ。『国の重役を身内で固めていい気になっている若造が許せなかった。同じ王家の血筋なのに、たった一度の王位継承争いに敗れただけでこんなに差がつくなんて理不尽だ』、ってよ」
シャープの報告に、フラットが苦笑混じりで付け加える。
「先王の従兄殿下のお嫁さんである、ヴェラさんのお姉様がそれを言うならまだ分かるんですけどねぇ。こちらからしてみればそんな欲望まみれの怨恨、それこそ理不尽極まりないですよ」
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