7人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
「だってよぉ、あのジィサン七十超えてンだろ? オレがやんなくても遅かれ早かれノドに詰まらせてたって」
「だからそういう問題じゃないっつーに! 不謹慎すぎるぞ!」
相変わらず反省の色が見られないシャープに全力で突っ込む。ここは俺の執務室だからいいものの、誰かに聞かれでもしたらどうするんだ。
話がズレてきたのを戻すかのように、フラットがわざとらしい咳払いをひとつ。
「ともかく。深夜までかかる雑務はほどほどになさってください。……それがたとえ、我々の幼い頃の写真を眺めることだとしても、です」
ぎくっ。
「気持ち悪っ」
嫌そうに両腕を抱き竦めるポーズを取ったシャープを見て、俺は反射的に立ち上がる。
「気持ち悪いことなどあるか! お前たちが生まれた時、幼心に『俺が守ってやらなければ』と思ったものだぞ、そしてその気持ちは今も変わっていない! 一日の終わりにアルバムを開くことは、俺にとって絶対必要な癒しのひとときなのだ! その大切な時間を取り上げる権利など、いくらお前たちであっても与えるつもりはないっ!!」
一気にそこまで言い切ったせいで酸素不足に陥り、肩で息をする。
そんな俺の様子をポカンとした表情で見ていた二人だったが――やがてお互い顔を見合わせて苦笑し、揃って俺の肩に手を置いた。
「それほどまでに可愛~い弟の頼みなんだから、訓練所の使用許可くれェ出せるよな?」
ニヤリと笑って、シャープ。
「明日の朝議も居眠りするようなら、一週間オヤツ抜きですよ、兄さん」
これ以上ない笑顔で、フラット。
用件を伝え終えてスッキリした様子の二人が部屋を出ていく後ろ姿を見つめながら、俺は改めて浮き彫りになった問題と直面せざるを得なかった。
ムジーク王国君主、トーン=スコア=ムジーク。目下の悩みは、臣下たちからイマイチ敬意を感じられないことと――俺の愛情が空回りしているということ。
あぁ、何故いつもこうなるのだ!
最初のコメントを投稿しよう!