国王と臣下の間柄(2)

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 ヤケクソ、とはこういう状態のことを言うのだろう。まったく聞く耳を持たないヴェラは叫ぶように言い切った後、肩を怒らせながらズシズシと早歩きで会議室を出ていった――かと思いきや、 「必ずですよ!」  もう一度顔を出して俺に念を押すと、今度こそ部屋の外へと消えていったのだった。  嵐が去り、残っていた参加者も退出して、周囲が一気に静かになる。 「……結婚、なぁ」  頭の後ろで指を組み、ボソリと呟いたところで、背後からクスッと笑い声が聞こえた。フラットだ。 「どうしたんです、陛下らしくもない。以前なら女性を紹介してくれる話には何でも目の色変えて飛びついていたというのに」 「人聞きの悪いことを言うな。あれはその、若気の至りというやつだ。……カ、カノジョの一人や二人、作っておいた方が良い人生経験になると思ってだな」 「今は、必要ないと?」 「そういうわけでは、ないのだが……」  何気ない質問に、俺は言葉を詰まらせる。心の内を上手く表現出来ずにしばらく沈黙してしまったのだが、フラットは特に続きを催促することもせず、苦笑しながら溜息をついた。 「しかし、ヴェラさんは手強そうですねぇ。何だか強引に縁談を成立させちゃいそうな勢いがありましたよ」 「うむ……相手の女性も強引に連れてこられてるパターンが目に浮かぶな」 「それならそれで、お断りしやすいんですけどね。もちろん、陛下のお眼鏡に適う女性でしたらその限りではありませんが」  クスクスと笑うフラット。何だか冷やかされている気分になって、俺は渋面を作る。 「お前は、兄が他の女に取られてしまってもいいと言うのか?」 「はい、むしろそうあるべきです」  即答されてお兄ちゃんちょっと凹んだ。 「私たちにとっても義姉になるわけですから、兄さんがご自分の意思で選んだ方でしたら歓迎しますよ。――ね、シャープ?」 「……オレに振ンなよ」  近くの扉の向こうから、仏頂面のシャープが姿を現す。 「なんだシャープ、いたのか」 「入らせてもらえねェから、部屋の護衛を交代した。オレはアンタの結婚なんかより、訓練所使えるかどうかの方が大事なんだけどよ」 「しつっこいなお前も! だったら反省文の一枚くらい持ってこんかい!」  へーい、とやる気のない返事をしてから、シャープは何故かニヤッと笑った。
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