国王と臣下の間柄(2)

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「……でもまァ、ちょっと面白そうだよな」 「ふふ、貴方もそう思いますか」  フラットも同調して、意味深な笑みを浮かべる。彼らは俺の見合いを楽しげなパーティーか何かと勘違いしているのだろうか。  朝からドッと疲れて、俺はフラフラと会議室を後にした。  見合いが実現する日は、さほど遠くなかった。  場違いなほどキラキラに飾り付けられた貴賓室に、元に戻すのが大変そうだなぁなどと安直な感想を抱く。やたら濃い化粧で鼻息荒く対面しているヴェラの隣で、ただひたすら恐縮している女性が俺の見合い相手だった。  名をファレといい、何とヴェラの実の娘だという。まだ十九歳だそうだ。ぴちぴちだ。 「……まさか身内を連れてくるとは思わなかったぞ、ヴェラ」 「身内ではいけないという決まりはありませんわ。遠縁ですが、血の繋がりはございませんしね」  俺は呆れながら伝えたのだが、ヴェラは意に介さないようだった。 「親のあたくしが言うのも何ですが、ファレは気立てが良くて料理上手、細かいところにもよく気がついて、陛下のお側に置くにはもってこいですわ。しかもご覧くださいこの豊満な胸」 「ちょっと、お母様っ……!」  顔を真っ赤にし、暴走する母親のドレスの袖を一生懸命引っ張って止めようとするファレ。ただし小声すぎてヴェラの耳には素通りされている。……ふむ、確かに胸は大きい。 「直接お話しして人となりを知っていただければ、きっとお気に召すと思いますの。ささ、あとは若いお二人だけで、中庭でも散策なさってはいかが? 東屋にお茶をご用意しておきますわ」  通り一遍の雛形台詞を言い終えて、ヴェラは満足そうに立ち上がる。俺も続いて席を立ち、移動しかけたところで、背後に控えていたフラットがこそっと耳打ちしてきた。 「若い女性と二人きりになりますけど、手を出しては駄目ですよ。陛下が女性に触れていいのは、許可がある時と緊急事態の時のみですからね」 「……わ、分かっている」
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