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* * *
「で。おまえは花野とちゃんと付き合ってるんだよな?」
「……」
昼休み。
お弁当も食べ終わって、廊下から外を眺めながらぼーっとしていたら、俺の隣でさっきまで静かにスマホゲームをしていた智秋が、指を連打しながら聞いてきた。
「もうクラス中に噂されてるぞ。おまえと花野が付き合ってるってさ」
「あ~まだ返事すらしてないのになぁ…参った」
がくっと頭を垂れて、窓の下を見下ろす。
…あ、篠岡さんが水やりしてた花壇だ。
綺麗に咲いてるなぁ。
すると隣で智秋がけらけらと笑いだす。
「もういいだろ、花野はおまえに本気なんだしさ、付き合えよ」
「智秋は告白しなくていいのか?花野のこと好きなくせに」
「うっせ。あんなにおまえに猛アピールしてる花野見てたら、告白する気も失せるっつの」
ハァ…とため息をつく智秋。
ちょっと俺にイラついてるみたいだ。
「智秋は友達思いで優しいなぁ」
「にやにやすんな。つーかあんまり花野を待たせるようなら…、横からかっさらっちまうぞ」
「ぶ、あっはは!智秋カッコイイ~!少女漫画にいそうな脇役のイケメンだな、いだっ!?」
指をさして笑ったら、頭に拳骨が落ちた。
…リーダーも智秋も俺に乱暴すぎな気がする。
「ぃったぁ~、褒めてやったのに!」
「うるさい。ハァ…花野は何でこんな奴がいいんだ。おまえが優しいだって?理解できない」
智秋はやれやれと首を振って、再びゲームをし始めた。
俺はムカッとしたけど、そんな俺とこうやっていつも休み時間を過ごす智秋は、何だかんだ俺のこと嫌いじゃないんだと思う。素直じゃないよなぁ。
「あっ、2人ともやっぱり一緒にいた~」
するとそこへ花野が笑顔で駆け寄ってくると、俺と智秋の前に立ち止まり「じゃ~ん」と後ろに隠していた両手を出して、可愛くラッピングされた袋を見せてきた。
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