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…子供がなんでこんな時間帯に、1人でいるんだろうか。
この辺りの民家の子かな。
「あ~…驚かせてごめんっス。君はこの辺りの子かな?」
「……」
笑みを浮かべて優しく問いかけるけど、女の子は再び自販機の背後に顔を隠して、今度はちらっと目元だけを覗かせた。
俺はくすっと笑って、女の子と視線を合わせるためにしゃがみ込んで問いかける。
「大丈夫っスよ、怖がらないで」
「……」
「1人でこんな時間にいたら危ないっスよ?」
「…平気だもん」
やっと口を開いてくれた。
そのことにホッとすると、女の子は恐る恐る自販機の背後から姿を現した。
今時の子じゃまず見ない着物姿に、思わず息を呑む。
足元も、さっき見た草履を履いていた。
…さっきの足の正体は、この子?
「かわいい着物っスね。よく似合ってる」
「…ほんと?」
「うん」
冷静を装って褒めてあげると、女の子は嬉しそうにぱあっと明るくなった。
そしてその場でくるりと一回転してみせる。花柄の赤い着物と黄色いリボンの帯が可愛らしい。
智秋から聞いた首なしの子供と姿は同じだ。
でも、この子にはちゃんと首がある…。
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