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* * *
「なぁ正人、どう思う?」
教室の机に頬杖をついてぼーっとしていたら、声をかけられた。
ハッとして顔を上げ、真横に視線を移すと、隣の席には同じクラスの友人、三嶋智秋(みしまともあき)が座っていた。
他人の席に勝手に座っている智秋は、眉を寄せて俺を睨む。
「え?悪い、聞いてなかった」
「おいおい、せっかくオカルト好きな正人が食いつくと思って仕入れてきた話なんだぞ。…もういい」
「悪かったって智秋。もう一回話して」
俺が笑って聞き返すと、大人びた顔で不機嫌になり口を曲げていた智秋が言う。
「だから、最近ネットを騒がせている幽霊トンネルの話だよ。正人、知ってるか?」
「あ~それか、知ってるよ。千切寺(ちぎりでら)トンネルだろ。首なしの幽霊が出る心霊スポット」
「さすが正人だな。あ、おまえオカルト部に入部してんだっけ?」
「違う、写真部だ」
おどけた口調で笑う智秋から目をそらし、教室の時計を見る。
もう休み時間終わるなぁ…。
「で、智秋が俺のために仕入れてきた話ってそれなの?つまんねーの、ガッカリだなぁ」
「はは。まぁそんな怒るなよ。おまえ、ゴールデンウィーク明けからずっと不機嫌だし、俺以外の奴らとまともに話してもないだろ。友達できないぞ?」
「またそれか、いらない心配だって言ってるだろ」
何だかムッとして、つい智秋を睨んでしまう。
智秋は苦笑した。
「正人はさ、もうその幽霊トンネルを調べ尽くしてるのか?首なしの幽霊とか気にならないのか?」
「そのトンネルについてはある程度調べ尽くしたよ。…けど首なしの幽霊ってさ、なんか良くある心霊スポットの体験談だし、あんまり興味わかねーじゃん」
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