上「幽霊トンネルの女の子」

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千切寺トンネルーー。 千切山(ちぎりやま)を通過するそのトンネルは今も使われているけど、去年に高速道路が出来てからは、その千切寺トンネルを利用する人は減っている。 それに、夜になればあそこは寂しい。 山奥に続くトンネル内も明かりが少なくて薄気味悪いのに、地元じゃ有名な心霊スポットにもなっている。 あのトンネルが心霊スポットだっていうことは、生徒みんなが知ってるくらいだ。 俺も中学生の頃なんか、夏に友達とよく肝試しにも行っていた。 でも幽霊は一度も見たことないし、そこのトンネルはもう飽きた。 「でもさ、俺の部活の先輩がゴールデンウィークの時に、あそこのトンネルで首なしの子供を見たらしいぞ」 「え、マジ?」 「あぁ。大学生のお兄さんの車で、ナンパした女性たちとノリで行ったらしい。そしたらさ、トンネルの出入口でうずくまってる小さな女の子を見つけて、心配になって車を降りて近づいてみたらーー」 ちょっと興味がわいてきた俺は、真剣に智秋の話を聞く。智秋は声のトーンを下げて妖しげに笑った。 「立ち上がった女の子の首が、綺麗になかったんだってさ」 「…首がないのに、なんで女の子だって分かったんだよ?」 「着物姿だったらしいぞ。色は暗くてよくわからなかったみたいだけど、花柄で、あとリボンの帯がついてて。女の子らしい姿だったってな」 「ふーん…」 「なぁ正人、おまえならさ、あの幽霊トンネルに出る首なしの子供の正体、分かるんじゃないか?」 「まぁ…心当たりはあるけどな。あの山って、曰く付きの山らしいし」 「曰く付きかぁ。殺人事件とかか?」 「それは知らない。まぁ、あの山で首吊って自殺とかは聞いたことあるけどな」 幽霊が出る場所には、必ず土地が関係しているんだ。 特にトンネルとなると、その一帯の土地か、山に何か関係がある。 そして、“千切”と呼ばれるあの辺りの山には、昔、外部から孤立した小さな村が存在していたらしいーー…。
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