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隣にずっとくっ付いてあれこれ聞いてくる花野を適当に相手してると、目的地の幽霊トンネルが見えてきた。
暗闇にぽっかりと穴を開けたトンネル内にはぽつぽつと明かりがついているのに、何故か薄暗い。
車もさっきからまったく通らないし、ほんとうに寂しい場所だ。
「…薄気味悪いところだな」
智秋が俺の隣にいつの間にか並んでいて、そう言いながら腕組みをする。
俺は智秋から目をそらすと、さっそくトンネルの入口近くへと向かっているクラスメイトたちを見た。その中にはさっきまで隣にいた花野もいる。
「で、正人。花野とは会話できたのか?」
「…智秋、わざと2人っきりにさせただろ。余計なことするなよなぁ」
「はは、ごめんごめん。でもさ、花野からお願いされたんだよ。つか、あんなモテモテな女の子に好意を寄せられてるんだぞ?もっと喜べよ男子高校生」
「俺、かわいい子はタイプじゃないんだよ、大人のお姉さまが好き」
「おまえなぁ…」
隣でやれやれと呆れる智秋に軽く笑って、俺は首に手を回して言った。
「そんなことよりさ、肝試し何だからやっぱりそれらしいことしようよ」
「あ~…だな。つか、おまえぜんぜんビビってないな」
「まぁこれくらいはぜんぜん怖くないけど。てか、ゴールデンウィークの時にいろいろ体験したし…」
そう。俺はゴールデンウィークに写真部の先輩たちと、とある村の民宿で二泊三日をした。
その時に、とても不思議で、とても恐ろしい目にあったんだ。
今でも思い出すと、あんな体験は二度と出来ないんじゃないかって思う。
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