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部室の中が随分と騒がしい。
それに眉を寄せて、躊躇いつつもドアに手をかけた。
途端に、豪快な笑い声と賑やかな声が響いた。
「だーかーらー!どーすんだよ、オマエ。まさか振る気じゃねえだろー!?」
「ったくよォー、オマエばっかずるいっての!俺なんて後輩からの義理チョコ一個だけだぜ?」
「マッジ!?少なッ!」
ゲラゲラと、愉快そうな笑い声がさらに響く。
いつもの数倍の熱気に包まれた室内に、チームメイトが集結している。
その一番奥で、他のチームメイトに追い詰められた祐一郎が壁を背に困ったような表情をしているのが見えた。
いったいなんなんだ、と入り口でその様子に眉を寄せていると、 手前のロッカーで着替えをしていた岡部が椎名に気づいて片手を上げた。
「おっす、椎名。遅かったな」
「ちょっとHR長引いて・・・・なにごと?」
「あー」
岡部は奥で密集している集団を見て、ハハハ、と笑った。
「日野が昨日、増井さんに告られたらしくてさ」
「・・・・そのことか」
「あは、やっぱり知ってた?菅野のことだから内緒とかいっときながら全員に喋り捲ってたんだろ?」
自分のロッカーを開けながら苦笑を洩らすと、岡部は愉快そうに笑った。
「まあ、昨日はバレンタインだし?増井さんが日野のこと好きって部内じゃ有名だったしな。 チョコはあげるんだろうと思ってたけど、告白しちゃうとはねー」
増井さんやるなー、と岡部はTシャツを被りながら、感心したように呟いた。
「だからさ、なんでみんなが知ってるわけ?」
奥から祐一郎の困ったような声が響く。
詰め寄っている五人はすでにジャージ姿なのに対し、壁に追い詰められている祐一郎だけはいまだ制服姿だ。
祐一郎の言葉に、その中の中心、菅野が勝ち誇ったようににやりと笑った。
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