第2章 11月19日土曜日

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「ユリカはさ、なんか行きたいとことか食いたいもんとかない?」 「うーん、特に。ショウくんに合わせるよ。」  こういう会話もいつものパターン。ユリカは、ショウくんに合わせるよと言って、予定や付き合い方を提示しない。かといって意見もなく人に流される子かというとそうではない。  自分の意思は一応ある、というよりむしろ強いほうで、趣味とか所持品とか、こだわりは半端ない。化粧品、服などは、ユリカ自身に合うものや自分の好きなものがハッキリ分かってるし、見つけてくるのも上手い。食べ物がうまい店もすぐ見つける。  そのくせ、いざデートとなると、自分からは何も言わないのだ。不思議な生き物である。クリスマスのプランも、俺が組むことになりそうだ。 「そうだな、京都駅のクリスマスツリー見に行こう。」 「うん。」 「あとな、うーん、ケーキ食べよケーキ。」 「うん。」 「近くにおいしいケーキ屋さんあるから、そこで予約しよう。イチゴとかチョコとか、ケーキの好き嫌いある?」 「特にないよ。ショウくん決めて?」 「じゃあお店行ってみて、パッと見で決めるわ。」 「うん。」 「まあこんくらい決めときゃいいっしょ。」 「うん。」  俺は、天井を見て、ゆっくりまぶたを閉じたり開けたりした。あーねむ。 「ねえショウくん、楽しみだね。」 「うん、楽しみ。」
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