音と猫とルビーの指輪

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――――  一室にある猫の像から指輪が消えた、という話が舞い込んできたのは、十七時頃。  ノリヒロが大きな声を上げて発覚した。  現場は書物や骨董品が飾られている部屋らしい。猫の像はその一つだった。消えた指輪にはルビーが嵌めてあり、数百万円は下らないらしい。  声を上げてしまうのも納得した。少し防犯意識が甘い気はしたけれど――。  ノリヒロが説明した経緯はこうだ。  最後に部屋を出たのは十六時直前だ。出る際に鍵はかけなかった。いつもそうだからだ。  一時間後、部屋の前を通ると、部屋の扉がなぜか開いていたという。  開けっぱなしにした記憶は、彼の中になかった。立て付けが悪くなっていて、上手く扉が閉まらないことは気になっていたが――。  いい知れぬ不安を抱え足を踏み入れたところ、指輪の紛失が発覚したわけだ。
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