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私のこの耳はきっと、ここに集まった人々の誰の耳よりも、明瞭で繊細な音を拾うことができると思う。
「つまり十六時から十七時までの一時間に犯行は行われた、ということです」
だから、爽やかでよく通る声が室内に響き渡ると、その主が小松タイチであると、私にはすぐにわかる。
こんなふうに堂々と話されると、聞く側も思わず納得する。生まれ持った才能だろうと、私は思った。
集まった面々はタイチの演説を聞き、一様に口を閉ざしてしまった。ぴりぴりとした緊張感のある雰囲気が、私にも伝わってきている。
まるで、ぴんと強く糸を張っているよう――。
ぞわぞわとして、身体中の毛が逆立ってしまいそうだった。今にも切れてしまいそうな危うさがあった。
タイチは続けた。
「皆さんがその時間に何をしていたか――いわゆるアリバイです――それをお聞かせ下さい」
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