音と猫とルビーの指輪

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「俺たちを疑っているわけか」  舌打ちをしたのは石田カツミだ。嫌味な抑揚はきっとわざとだろう。 「まあまあ。もちろん自分も容疑者のうちなのでご容赦を。それに発想の転換です。アリバイと聞いて不快でしょうが、アリバイの証明は即ち、無実の証明ですから」  ふん、と鼻を鳴らす者がいた。たぶんまたカツミだ。  カツミという人間は私の苦手なタイプだ。 「ここは現役警察官にお任せしましょう」  話を前進させる一言を告げたのは、ショウジだった。静かで落ち着いた口調は、彼らしかった。  ショウジは私の頭をそっと撫でた。 「小松さん。ど、どうか、ここはお願いします」  会の主催者、三井ノリヒロが、余裕のなさそうな嗄れた声で依頼した。それにより、皆がタイチの意見を受け入れる空気へと移行する気配があった。  そんな空気を、私は彼らはよりも少し低い位置で、ひしひしと感じていたのだった――。
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