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「……えっと……じゃあ行きます……」
ほなみは、心臓をバクバクさせながら、西本が居る寝室のドアノブに手をかけた。
――向こうに西君が居る。
澄んだ無邪気な瞳を、真っすぐに見る事が出来るの?
あの甘い声を聞いたら冷静さを保っていられる?
しなやかな腕で抱きしめられたら――
一瞬のうちに様々な思いが頭の中を駆け巡り、会う前から混乱してしまう。
「――おい、さっさと入ったらどうだ」
綾波に鋭く言われ、ビクリと背中を震わせた。すると、三広が鼻にティッシュを詰めたまま顔をしかめる。
「もうっ!綾ちゃん!ほなみちゃんを苛めないの――!」
「なんだ三広、じゃあお前がこの女を苛めたいのか?……ほう、新たな趣味が出来たのか……それは結構な事だ」
「ぶっ――!な、なんでそうなるのさ――!俺はただ」
「おい、また鼻血だぞ」
「三広君……大丈夫?」
ほなみが振り返った時、ドアの向こうで
「畜生!
と切迫した叫び声が聞こえた。
同時に何かが割れたような音がして、ほなみは躊躇なくドアを勢い良く開けた。
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