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「……こっちを向けよ」
彼の低い声が聞こえたと同時に、両腕を乱暴につかまれた。
「きゃっ……」
「ほなみちゃん!」
三広が目の色を変え立ち上がる。すると綾波が部屋に入って来て三広を制した。
「……ここから先は邪魔だ」
「綾ちゃん……でもっ」
綾波は、心配してこちらを見る三広を強引に連れて行き、一言、
「……後は上手くやれ。報告を忘れるなよ」
と、告げてドアをピチンと閉じた。
部屋は、再び夜の様な闇に包まれた。カーテンに星座の模様が浮かび上がる。
ほなみは、西本に真っ直ぐに見つめられて、狼狽しながらも烈しくときめいていた。烈しく抱かれたあの夜に揺れていた彼の髪は少し伸びて瞳を隠して居る。彼が呼吸をすると微かにフワリと靡き、澄んだ輝きが垣間見える。そのたびにほなみの胸が苦しい程に早鐘を打つ。
思わずまた目を逸らすと、グイと腰を抱き寄られた。彼は唇が触れてしまう程に顔を近付けて来る。
「……三広に頼まれたから来たのか」
「……」
「俺を殴りたくなるくらい、三広が大事か!」
「西君……?」
ほなみは、彼の勘違いに、頬が緩みそうになっていた。
(西君……嫉妬してくれてる……の?)
「いつの間に……あいつと出来たのかよ……っ……クソッ……」
激情を込めた声色で言うと、彼は突然ほなみから手を離し、悲しい目をした。
「いいよ……殴れよ。好きなだけ……」
西本はほなみに向かって、無防備に両手を広げてみせる。
「違うよ……ただ私は……」
「ただ……何なんだよ」
彼がゆっくりと近づいて来て、ほなみは後ずさる。
「……三広君……は、本当に西君の事を思ってるのに……あんな言い方をして酷いって思ったから……
だって……三広君は、大切な仲間でしょ?」
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