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「大丈夫かな……ほなみちゃん」
三広は、寝室のふたりを気にして落ち着かなかった。綾波が出した紅茶にも手を付けずちらちらと視線をさ迷わせている。
綾波は、紅茶に角砂糖をポトリとひとつ入れた。繊細な手つきでスプーンで掻き回す。更に角砂糖をもうひとつ入れてスプーンをくるくると動かしてから一口含む。どうやら甘さが足りないらしいーー角砂糖をみっつカップへ投入した。美味い、と言いたげな満悦な笑みを浮かべ紅茶を味わう。
「――やっぱり心配だ!」
三広は椅子から立ち上がった時、膝をテーブルの角で強打してしまった。
声にならない叫びをあげてうずくまる。綾波が苦笑した。
「祐樹のためにあの女を呼んだのはお前だろう。直感を信じてドンと構えておけ」
三広は、悲壮な表情で強打した向こう脛を手でさする。
「うう……そうだけど。祐樹が立ち直ったとして……その後は?どうするの?」
「さあな。不倫関係がバレたら困るのはあの女だろう。こちらとしても世間のクレッシェンドのイメージがある。いずれ清算してもらう事になるさ」
綾波は底知れない色をその目に浮かべた。
「そんな……」
三広が、顔を曇らせる。
「お前、祐樹とほなみが上手くいって欲しいと本心で思っているのか」
綾波は、俯いた三広に鋭い目を向けた。
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