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三広は、強い口調で言い返す。
「……ど、どういう意味さ?そんなの当たり前じゃん!」
「なら、いいんだがな」
綾波は、ポンと軽く三広の頭を叩き優しく笑う。彼がこんな顔を見せるのは珍しい事だった。
「なんだそのぎょっとした顔は」
「綾ちゃんが、そういう顔をする時は何か悪いことを考えてる時だよっ!怖い怖い怖い怖いっ」
「失礼な奴だな。俺だって何の他意もなく笑ったりするさ」
「ええっーー?」
「例えば、お前みたいなマヌケ猿が面白い事をしでかした時にはな。
可笑しくて笑いたくもなる」
「うんうん。そうか――成る程!……て!ひでえよ綾ちゃん!」
三広が真っ赤になって憤慨する。
綾波は鼻で笑って紅茶を飲み干し、立ち上がった。
「さあ、帰るぞ」
「えっ?帰るって」
綾波は律儀にカップを手際よくシンクで洗う。
「あいつらの情交が終わるまで、ここで待つのか?」
「……!」
三広が、かあっと耳まで赤くなり唇を噛んだ。
「あの様子だと、朝まで終わらないかもな。
あの女……大人しそうな顔をしてるが結構なモノかも知れんぞ……
祐樹も相当飢えていただろうからな……さぞかし激しく」
「やめろよっ!」
三広が、拳を握り締めて怒鳴った。
その目は微かに潤んでいる。
綾波は目を細め、水を止めた。
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