盗み見られた、愛

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「……あの女といいお前といい……虐めたくなる表情をしてくれる……」 「はあっ!?」  綾波は、濡れた指の飛沫を三広に思い切り浴びせた。 「ほら。少し頭を冷やせ」 「つめたっ!」 「行くぞ」 「ちょっ…待ってよ」  三広が慌てて追いかける。綾波が急に歩みを止めたため、背中に鼻をぶつけてしまった。 「なんだよ!急に立ち止まんなよ!……ふぐっ」  綾波は、無言で三広の小さな口を掌で塞いだ。 「んん?……なにっ」 「静かに」  三広は、綾波の視線の先をみとめ、あっと叫びそうになる。寝室のドアが5センチほど開いているのだ。暗い室内の二人の気配を感じ取る。思わずごくりと喉を鳴らし、綾波の手を突っついた。 「綾ちゃ……覗きはだめ!」 「いいから、見とけ」    綾波は、三広の口を塞いだまま妖しく笑った。 「なっ……悪趣味だってば……むぐぐ」  三広は、いけないと思いつつも、目を懲らして部屋の奥を見つめてしまう。  すると、小さな悩ましい息遣いが聴こえてきた。三広の身体の全神経が、カッと目覚める。祐樹の息遣いなのか、ほなみの物なのか、どちらにしても聴きたくなかった。
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