祈りと畏れと

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 花瓶から零れた薔薇が床一面に広がっている。花弁たちが、助けを求めているいかのように見えた。 「……お願い……あのままじゃ可哀相……」  西本は、頬をゆるめ、ほなみを解放した。  ほなみは急いでベッドから降りて、その辺にあったタオルを勝手に借りて床を拭き、散らばった薔薇を丁寧に拾い集めていく。  西本は、一生懸命になっている彼女を、ベッドに腰掛けてじっと見つめた。 「……早くおいで」 「ちゃんとしてから行きます」 「あんまり俺を待たせると……お仕置きするよ?」 「なっ……!も、もうっ!だいたい、散らかしたのは西くんでしょ?」 「うん、そうだけど」 「……わ、わかってるんだったら、西くんも手伝うとか、するでしょ普通!」 「やだ」 「やだっ……て」 「なんか……屈んで薔薇をかき集めてる姿が、色っぽいなと思って」 「ーーっ」 「だから、ここで眺めて楽しんでるんだよ」 「……っ……もうっ……西くんたら……うまいこと言ってーー」  ドキドキしながら薔薇を一本一本拾い上げ花瓶に活ける。  西本がいつの間にか背後にいて、落ちている薔薇を拾い上げていた。  彼は薔薇を持ったまま、片方の手でほなみをつかまえ強引にベッドに倒した。
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